ななよの日々是好日

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ななよの即興ストーリー その2

サラと不思議な洋服屋さん②

 

その細い路地の向こうには、色とりどりの光に照らされた小さなお店がたくさん並んでいるようです。サラは、電球の光に見とれながら、路地を進もうか、引き返そうか、何だか少しコワイような気持ちで、たたずんでいました。

すると、さっきサラが追いかけていたフワフワした羽とそっくり同じ色をした鳥が、電球のぶら下がった電線の上に止まっているのが見えました。サラが目を向けた途端、その鳥は、サラを呼ぶように何とも言えない綺麗な高い声で鳴いたのです。

いつもは寄り道をしないとお母さんと約束しているサラですが、「ほんの少しだけ」と心で呟きながら、路地に一歩踏み入れました。そしてその鳥の止まっている方に近づいていきました。ところが、手を伸ばせば届くほど鳥に近づいたと思うと、またもや鳥は飛び立ってしまうのです。

そんなことが3回続いたあと、その鳥はとうとう、一件のお店の中に吸い込まれるようにして、姿を消しました。

「失礼しまーす。」職員室に入る時と同じ挨拶が、思わず口に出たのがちょっぴり恥ずかしくて照れ笑いをしながら、サラはお店のガラス戸の隙間に体をすべらせるように入っていきました。

「いらっしゃい」といいながら、珍しい羽飾りのついた帽子をかぶった小さな男の店員さんがお店の奥から出てきました。f:id:nanayo743:20200329120825j:image